10万円の定額給付金は未来への投票券。地域のみんなで生き残るための3つのヒントとは

10万円の定額給付金は未来への投票券。地域のみんなで生き残るための3つのヒントとは

いや、ええ、わかってるんです。

「定額給付金をこう使え!」みたいなんは本当に余計なお世話、なんてことは。

でもでもだけど、何回考えても大事だと思うんです。「地域内経済循環」って考えが。みんなで生き残るためには。

なのでちょっとやっぱり、しゃべらせてもらえればと。定額給付金をどう使うか、について。

定額給付金は地元で使おう。 みんなで生き残るために。

僕の言いたいことは、ただひとつ、シンプルです。「10万円の定額給付金が支給されたら、地元で使おう」これだけです。

ヒント① 「地元での消費」はコロナ禍の数少ない有効策

これは内田樹の「ローカリズム宣言」という本に出てくる話です。

加子母に行って一番驚いたのは、人口3000人の集落に飲食店がいくつも営業していることでした。中島社長に聞いたら「27軒ある」ということでした。
人口3000人の村に27軒というのは「ありえない」数字です。計算すると1軒あたり100人少しの顧客しかいないんですから。


(中略)

これだけの数の飲食店が共存できるのは、村の人々がすべての店の経営が成り立つように、外食するときに行く店が「ばらける」ように工夫しているからです。

みんなが少しずつ違う店に通えば、どこもそれほど儲かるわけではないけれど、生活できる程度の商いならできる。

【出典】内田樹 「ローカリズム宣言」

通常では数軒しか生き残れないはずの市場で、27軒もの店が生き残れている。これを可能にしているのは、「買い支える」という行為でした。

コロナを乗り越え、みんなで生き残るための数少ない有効策は、この「地元での消費」じゃないかと思ってます。

ヒント② 買い支えの担い手は島に多い

そして買い支えの担い手は、実は久米島には多くいるのです。

次の図は久米島における雇用者所得の多い産業を順番に並べたものです。

環境省 地域経済循環分析自動作成ツールより作図(2013年のデータ)

これによると、久米島町民の所得として大きな額をあげている産業は、上から順番に「建設業」「公務」「公共サービス」です。

このうち建設業の会社にとってコロナはマイナスに働きますが、公務や公共サービスに属する労働者は、コロナによる所得の減少の影響はそれほどないものと考えられます。

役場職員さんとか、学校のセンセとか、自衛隊さんとかね

 

そしてもしこのような産業で働く人達が、コロナの影響を強く受ける産業を買い支えてくれるなら、地域全体のコロナの影響を軽減できるはずです。

普段なら週末や長期休暇で島を離れ、那覇や旅行先でお金を使う人もいるかもしれませんが、今はそのような移動はなかなかできません。そのため今はある意味地域にお金が落ちやすいチャンスでもあるのです。

ヒント③ 地域内でお金がとどまり回れば、10万円の定額給付金で35億円の経済効果も

また別の話を紹介します。このスライドは、幸せ経済社会研究所所長の枝廣淳子氏によるもの。同じ1万円が2つの地域に入ったときに産まれる経済効果のちがいを説明しています。

【出典】 ①地域経済循環システム構築の基本的な考え方と事例 ②企業の地方創生への取り組みを後押しするために /枝廣淳子

左の地域では、入ったお金の20%しか地域に残らず、大部分が地域外へ流出していきます。そうすると1万円を地域外から稼いでも、地域内には12,500円の経済効果しかありません。

ですが、右の地域では入ったお金の80%が地域に残り続けます。そうすると、1万円を地域外から稼げばその効果が波及し、最終的には5万円分の価値が地域内に生まれるのです。

ところで、政府は老若男女問わず一人あたり10万円を給付する「10万円特別定額給付金」の支給を決定しました。仮に久米島で7,000名の人がこの給付金を受け取れるとすると、10万円✕7,000名=7億円のお金が入ってきます。

そこで考えてみます。久米島がもし右の地域だったらどうでしょうか。 先の例では1万円を投入すると5万円の経済効果が生まれたので、ざっくり5倍の経済効果が生まれるとします。7億円✕5倍=35億円の経済波及効果が生まれるのです。

第2次久米島町観光振興基本計画によると、コロナ以前の久米島では年間72.8億円の観光収入があったそうです。観光収入の半分程度の金額が10万円特別定額給付金によりまかなえます。

実際には「地域内に 80% のお金が残り続ける」というのはなかなか難しいことでしょう。

ですがそれでもなお、「地域内にお金がとどまるようにする」「 地域内でお金を回す」というのは、一考に値するアイデアであると思っています。

10万円の定額給付金は未来への投票券

とても押し付けがましいことを申し上げたかもしれません。すみません。

ただやっぱりせっかく同じ島に住んでるんだから、困ったときはみんなで助け合って乗り切りたい。そしてそれはきれいごとなんかじゃなくて、島で暮らす上で実益のあることです。

島で暮らせる人が少なくなり人口が減れば、飛行機やフェリーは減便したり、料金が高くなったりします。

飲食店や商店のようなローカル型のビジネスを営んでいる人は、ますます商売が厳しくなるでしょう。お客さんの母数が減るのですから。

仮にですよ、万が一人口が減らなくても、経済的な困窮者が増えれば島の治安はまず間違いなく悪化します。人は貧すれば鈍する生き物ですから。

そのような状況を少しでも回避するため、そして愉快にこの島で生きていくためには、

お金を必要以上に溜め込むんじゃなく、インターネットや通販で散財するんじゃなく、#島でつかおう。そう主張したいのです。

もちろん、エシカル消費をするとか、子育てや教育の費用に使うとか、勉強するとか投資するとか寄付するとか、いろんな良いお金の使い方がほかにもあります。それぞれ地域内でお金を使うことと同様に大事なことだと思います。もちろん生活費の補填に使うのも良いでしょう。

ですが、少なくとも言えることがあります。1人一律10万円配られるこの定額給付金は「未来への投票券」であるということです。どんな未来に投資をするか、もしくはしないのか、問われています。

投票券として十分ではないのは誰もが痛感していることでしょう。「10万円ぽっちをもらったって、赤字補填の足しにもならない」などと思う方も多いはずです。

ですが、もともとの選挙権も、1人1票。どうしようもなく少ないものです。それでもなお、その配られた1票を大事に、どう使うか考え抜くことが良い未来をつくると信じています。 

僕はこの10万円の定額給付金をローカル経済に投票したいと思っています。みんなで生き残るために。

未来への投票券、あなたはどう使いますか?

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