コロナから自治体DXを考える。ポスト申請主義の必要性とは

コロナから自治体DXを考える。ポスト申請主義の必要性とは

こんにちは、いしおです。

僕は沖縄から西に100kmほどいったところにある離島、久米島で、一人会社を経営しているのですが、

2020年は久米島町の新型コロナ相談ダイヤルを運営し、持続化給付金などの申請サポートを行った後、県外自治体のデジタル変革(DX)に関する計画策定をお手伝いさせて頂いております。

そんな1年間を振り返って思った、「自治体のDXやポスト申請主義の必要性」について今回は解説したいと思います。

コロナのみならず、適切な行政支援にアクセスできない人たちを救うための自治体DXであり、ポスト申請主義なのだと思ってます

「静かに溺れていく」

新型コロナ感染症を受け、多くの自治体が給付金や支援金のサービスを拡充していきました。

もちろん完全に行き届いていない部分もあるかと思いますが、多くの自治体の職員さんは地域の暮らしを守るために尽力していました。

私も新型コロナ感染症の総合相談窓口を運営し、持続化給付金申請サポートをさせて頂きながら、難しいことがありました。

それは、「本来適用されるサービスがあるのに、情報を知らなかったり勘違いしていたり、申請や相談をしてくれない」というケースです。

行政サービスが届くのは、行政にたずねてきたり問い合わせてくれたりした場合のみです。

行政に相談せずにただただ困っているような、いわゆる「静かに溺れていく」ような方が、どうやらかなりの数いる。そのことがわかりました。

でも実態はつかめない。なぜなら問い合わせしてくれないからです。

情報発信の限界、申請の限界

「もっと情報発信すべきだ」

「しっかり周知すべきだ」

といった感想をお持ちになることでしょう。

ですが、それは「言うは易し行うは難し」だと思います。

私たちは身の回りの全ての情報に気を配っているわけではありません。

掲示板に貼られたポスターや、配られる行政の広報紙、ラジオやテレビなどを通じた情報発信に、隅から隅までチェックする方が果たしてどれだけいるでしょうか。

さらに、言葉が悪いですが実際の所、「静かに溺れていく」方は情報リテラシーがそれほど高くありません。文章を読むのが苦手だったり、ニュースをチェックしていなかったり。

情報リテラシーの高い人は、しっかり支援金や助成金の情報をキャッチして、わからないことがあればどんどん連絡してくれます。こういった方々については、概ね用意してある行政サービスをしっかり届けることができます。

ですが、「静かに溺れていく」方は、こちらが情報発信してもなかなかキャッチしてくれません。

情報をしっかりキャッチしてもらうために「広告」とか「PR」みたいな技法が生まれているのかと思いますが、そのようなスキルを中小規模の自治体が簡単に活用することは難しいです。

これが僕がコロナの相談窓口や支援金の申請サポートを行った結果の「情報発信と申請の限界」です。

ポスト申請主義とは

その後縁があって自治体のデジタル変革のお手伝いをさせていただくようになりました。そんな中知ったのが、「ポスト申請主義」という考え方。

ポスト申請主義とはその名の通り、「申請主義」の後(ポスト)という意味で、現在当たり前になっている「申請主義」の課題を解決していく動きのことです。

1.申請主義とは?
市民が行政サービスを利用する前提として、自主的な「申請」を必要とすることです。

例えば、児童手当のサービス受給要件に該当している人がいたとしても「申請」をしなければ、受給に至ることはありません。

2.申請主義によって生じている課題
「制度・サービスによって課題解決・軽減につながる問題を抱えている人」が、「必要/適切なタイミング」で、「必要な制度情報を入手」し、「申請手続き」を行い、制度・サービスの利用に至ることを妨げていること。

→それによって「制度・サービスによって課題解決・軽減につながる問題を抱えている人」が制度やサービスの申請に至らず(例:捕捉率の低さ)、必要な制度・支援を活用できず、最悪の場合は生活困窮・孤独死・餓死・自殺等など生活や生命が脅かされる可能性がある。

引用:ポスト申請主義を考える会

私にとって支援を受けるときには申請を行う、というのが当たり前だったので、この「ポスト申請主義」はとても新鮮でした。

ですが既に海外の先進国では実現されていることもあり(exコロナに関する支援金が申請しなくても勝手に口座に振り込まれるなど)、決して不可能な領域ではありません。むしろ日本が後進的であると考えて良いでしょう。

そして海外の先進国でポスト申請主義が実現できている背景には、日本よりかなり進んだデジタル化した行政運営の姿があるのです。

デジタルデバイドを解消するためのデジタル化

今自治体のデジタル化をお手伝いさせて頂く中で、市民や自治体職員の方からこのような声をよく聞きます。

「デジタル化をすすめることで、デジタル技術が活用できない人が困るのでは」

ですがここまでお読みいただいた方はもうお気づきであると思います。

デジタル化をすすめることは、情報格差を広げるものではなく、むしろデジタルデバイドを解消することなのだと。

あまねくデジタル技術を浸透し、極端な話市民はデジタル技術を「活用している」という意識を持たず、恩恵を受ける。

このような姿を実現することが、自治体のデジタル変革であり、コロナに限らず様々な自治体サービスを受けられず「静かに溺れていく」人を救う手段なのだと考えています。

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