久米島の観光振興に必要なこと~「やる人」ありきの計画を~

久米島の観光振興に必要なこと~「やる人」ありきの計画を~

第二次久米島町観光振興基本計画策定のワーキンググループメンバーに入れていただいています。

座長から今後の久米島町の観光振興に必要なことを提案をしてほしいと言われたのですが、一生懸命資料を作っても会議内だけで見られないともったいないので、僕が久米島町の観光振興で必要だと思うことをブログで公開してみます(会期中には間に合いませんでした、すみません……)。

結論から言うと、「『観光プログラム提供』『お菓子を中心としたお土産商品開発』を行う複業型個人事業主・起業家の創業支援」を考えています。

甘い考えかもしれませんし、表現が稚拙かもしれずちょっと怖いのですが、勇気を出して訴えてみたいと思います。

目次

まずは観光の恩恵に気づくことから

「観光振興計画」について語る前に、まず我々は、現在の久米島町にとって、観光の重要性を自覚する必要があると思います。久米島町において観光産業が与えてくれている恩恵を、僕らはもっと理解するべきです。

まだ正式に公開はされていませんが、久米島町観光振興計画策定を受託しているコンサルティング会社さんの調査結果速報によると、町民の感覚としては1/4が「観光の経済的な効果を感じない・あまり感じない」としており、「効果を感じる・やや効果を感じる」と答えた割合を上回る結果となりました。

直接観光客さんと触れ合わない仕事に従事する人が多いからこのような結果になったのでしょうが、島に大きな恩恵を、観光はもたらしてくれています。

観光客さんが多くいらっしゃってくださるからこそ、1日に7便も飛行機が飛んでいるし、人口規模の割に大きな病院が維持できる。観光客が地域外から外貨をもたらしてくれるからこそ、コンビニエンスストア、スーパー、飲食店に島民もアクセスできるし、商品を出荷している島内の生産者さんも潤う。観光客さんとの交流が生まれた結果、結婚する人も少なくありません。

おそらく、この結果は、直接観光客さんと触れ合うような仕事をしない限り大きくは変わらないのでしょうが、経済や都市機能、交流が島にとって必要と考えるのであれば、必然的に観光はとても重要な産業と位置づけられるのです。

提案の前提

ここからは、提案の前提となる考え方について説明します。

計画に盛り込む価値とは「説得力の獲得」

そもそも、行政が策定する計画(総合計画、産業振興計画、観光振興計画、移住定住促進計画etc……)を策定する価値とは何でしょうか。

個人的に最も価値があると思うのは「計画に記載された内容は、その地域において『実現すると良いこと』となる」ことです。

例えば、僕の住む沖縄・久米島町では、総合計画において移住定住を「推進する」という意思決定をしています。したがって、総合計画が有効な10年間は、「移住定住の推進」は、町にとってとても重要で、ぜひ進めるべきこと、良いこととされます。

これが、総合計画に定められていない場合はどうでしょうか。議会や町民から「なぜ移住定住の推進をすべきなのか」と聞かれたときに、様々な理由をもって、いちいち説明しなければなりません。しかし、総合計画に定められている場合は、「総合計画に記載があるから」という答えで済みます。「もう話して合意形成してあるでしょ」と。そしてその答えには一定の説得力をもたせることができるのです。

行政が策定する計画がうまくいかないのは「やる人の不在」

では、行政が策定する計画が芳しい成果を挙げていないのであれば、それはなぜでしょうか。その大きな理由の一つは、「やる人の不在」です。

計画に記載される対策は、現状も踏まえて有効と思われるアイデアを住民や行政、有識者からヒアリングし、外部コンサルなどが吟味をした上で策定されています。そのため、出来上がった施策を見ると、莫大な予算がかかるものや時流に全くあっていない一部の施策以外は、概ね反論が特にないものとなることでしょう。

基本的にそれらの施策は「やれば良いこと」が書いてありますので、読んだ感じは概ね「うん、実現されればいいよね」といった感想を抱くことでしょう。でも、実現されない。やる人がいないからです。

「誰がいつまでに」が決められていないタスクは遂行されないのと同様、やる人がいなければ、その施策は実現されません。だから、「何をやるべきか」を議論するよりも、「誰が何をやりたいと言っているのか」を探ることから、計画として盛り込むべきことを決める方が、建設的だと思うのです。

「私達がこれをやった」と言えることが誇りを生む

行政が策定した施策の中には、実行されるものもあります。中には、称賛されるべき成果を挙げているような事業もあるかもしれません。しかし、この場合でも、住民は実行されたことを評価せず、そもそも実行にすら気づかず、「何も変わっていない」「行政はだめだ」といい続けます。なぜでしょうか。

施策の実行者が行政であることがほとんどだからです。人は自分が関わっていないことに対して、それほど興味を示しません。そして、一般市民は行政の努力にほとんど無頓着です。施策が実現されたとしても、一般市民はそのことを知らない。知ったとしても、評価しない。自分はそのことに携わっていないからです。

住民の行政への満足度を上げ、「この町はいい町だ」と思ってもらうためにも、実行される施策には少しでも多くの人が「関わった」「努力した」と思えるような仕組みが必要だと思います。

中国の活動家、ジェームズ・イェン氏が残した詩、「GO TO THE PEOLPLE」のラストは、このような言葉で終わります。

of the best leaders (最高の指導者と共に、)
when their task is accomplished (仕事を終えたとき、)
the people all remark (人々は口々に言うでしょう。)

“We have done it ourselves” (「私達が自分でやり遂げたのだと。」)
【出典】HANDS_GO TO THE PEOPLE

「私達が自分でやり遂げた」。住んでいる人たちがそう思えるまちづくりこそ、あるべき姿なのではないでしょうか。

「我々が成し遂げた」と思えるからこそ、住んでいる地域や自分の仕事に誇りが持てるのではないでしょうか。

これは僕自身の価値観にも基づきますし、とはいえ言うは易し行うは難しなのですが、多くの市民が計画づくりのみならず、施策の実行に関われ、達成感を味わえる仕組みが重要だと思うのです。

前提のまとめ:「やる人」ファーストの観光振興計画を

ここまでの前提をざっくりまとめてみます。

「『やる人』がはじめにあり、施策はその後。施策の実行者が増えることが町の誇りをつくる。計画はその方針に説得力をもたせ、『やる人』の背中を押すものである」

「観光振興計画で何をするか」を議論する前に、「この計画はどうあるべきか」を考えると、僕の中ではこのような感じです。

観光の課題

ただもちろん、「なんでもやっていい」というわけではありません。久米島町における観光の課題解決に資することを、施策として盛り込むべきだと思っております。

では、久米島町の観光にはどのような課題があるのでしょうか?

経済振興の観点

冒頭にも触れましたが、なぜ観光振興が町として必要なのでしょうか。最も大きな理由は「経済」です。島内が経済的にうるおい、便利な都市機能を維持し、島民が食べていけるようにするためです。したがって、観光振興計画を考える上では、経済振興の観点が重要となります。

観光振興は島全体が潤う

まず前提ですが、観光を振興することは、久米島町全体が経済的に豊かになりやすいです。

環境省の提供しているツールに、地域名を入力するとその地域の経済循環を分析し出力してくれる、非常に優れたツールがあるのですが(環境省_地域経済循環分析自動作成ツールの提供について)、

そのツールで久米島の生産誘発額を見てみましょう。

生産誘発額とは、地域内(久米島町内)への波及効果を意味します。つまり、生産誘発額が大きいほど地域全体が儲かる、という感じで考えてください。

結果としては、「食料品」「水産業」「電気業」「対個人サービス」「繊維」の順番に生産誘発額が高くなりました。

対個人サービスとは、ざっくりダイビングなどの体験業、飲食業、宿泊業をひっくるめたものです。

食料品には、とくに島外に出している砂糖が大きく含まれるとは思いますが、お土産用の食料品なども含まれます。みそクッキーとか、ジャムとか。水産品とあわせて、観光客さんが召し上がるものです。農家さんから仕入れた食材を加工し、お客さんに提供することは、島内の経済循環に良い影響を与えることは想像にかたくありません。

ちなみに繊維は久米島紬でしょう。島内にあり観光客さんもよく訪れるユイマール館では、高価な織物だけではなく、手の届きやすいシャツやアクセサリーなども販売しています。

電気業を除くこれら生産誘発額の高い産業は、観光と密接に結びついています。観光を振興することにより、産業の消費が伸びることが期待できます。つまり、観光振興は、地域内への波及効果が高く、島全体がより経済的に豊かになりやすい施策なのです。

お土産:他離島と比べての消費額低い

ここからは、特に切り口を「お土産」と「宿泊」に絞ってみます。

以前書いたブログ記事から抜粋しますが、久米島のお土産・買い物の消費額はかなり低いです。

沖縄県による「平成29年度観光統計実態調査報告書」によると、
平成29年度、県外からのお客さんはお土産・買い物に平均13821円使っていますが、
久米島ではその半分ほどの、7206円しか使っていないとのことでした。

【参考】平成 29 年度観光統計実態調査/沖縄県
「図表2-13 県外客消費単価」「図表3-30 久米島における県外客・圏域外県内客の消費単価」より

また、下のグラフからもわかるとおり、
沖縄県全体、八重山、宮古と比べ、
お土産の満足度も低いです。

【出典】平成 29 年度観光統計実態調査/沖縄県

※こちらのブログより。

https://i-shio.com/2018/10/24/beniimo1810/

消費額、満足度からも、久米島のお土産はテコ入れしがいがある領域だなあと思います。

また、前述の通り、特に食品や紬関連のお土産であれば、経済的に良い波及効果が期待できます。

宿泊:島外資本のため、お金が地域外へ流出する?

これは事業者ごとの経済循環分析のデータがない(そもそも取りづらい)ため、実際の数値を追うことができず厳密にはわからないことなのですが、一つの可能性として紹介できればと。

久米島には大きなホテルが3つあります。「イーフビーチホテル」「リゾートホテル久米アイランド」「サイプレスリゾート久米島」です。これら3つのホテルはそれぞれ、島外資本の会社が運営しています。ということは、久米島であがった収益は島外の企業へ流れる、ということを意味します。

もちろん久米島の雇用創出や周辺産業の活性化には良い影響を与えてくださってますし、悪者にするつもりもありません。個人的には、リゾートホテルのテラスやカフェなどで悠々自適にリモートワークをしている時には「こんな環境を用意してくれて感謝しかない……!」と思いますし、島民向けのキャンペーンを色々打ってくださっており、毎回楽しみにしていたりもします。ありがたい存在です。

しかし、もっと島の経済を良くしよう、と思うのであれば、そして選べる選択肢があるのであれば、島外資本ではなく島内資本の会社の成長を支援したほうが、経済的にもより有効だとも思うのです。

オーバーツーリズム問題は?

観光地でよく発生する問題は、過剰に観光客が殺到することにより発生する「オーバーツーリズム」です。生活基盤に住民がアクセスしづらくなることや、環境負荷の増大などが起こります。久米島では実際どうでしょうか。

エリア分けされていることからも、オーバーツーリズムは感じない

久米島町では、基本的に観光客さんが滞在するのは島の東側、「イーフエリア」です。ホテルや飲食店が集中しています。イーフエリアは多くの住人にとって、生活環境からある程度隔離されていますので、どんなに混雑していても日常では気づかないことが多いです。

もちろん混雑時はイーフエリアの飲食店の予約が取りづらくなる、といったことはありますが、日常的に混雑が続いているわけでもありません。基本的に島民の生活に影響を与えるほどのオーバーツーリズムは発生していないと思います。

オンシーズンとオフシーズンの平準化は重要

ただ、夏場や楽天さんがキャンプにいらっしゃるオンシーズンは、飲食店や宿、車の予約が取りづらい状態があります。これが激しくなると、お住まいの方々やお仕事でいらっしゃる方々は不便に感じることも増えてくるはずです。

今はそれほど顕著ではないですが、ごみ処理や電力消費なども、これ以上オンとオフシーズンの差が大きくなると顕在化しそうですよね。今回の久米島町観光振興計画策定に関するレポートでも、オフシーズンとオンシーズンの差が大きく、平準化が大事とされています。

環境面への負荷は

環境面への負荷に関してはどうでしょうか。

これは詳細な調査結果を見ているわけではないので、なんともいえません。ただ、環境保全に取り組む島の方々に話を聞いた感覚でいうと、どちらかといえば「農薬の使用」「サンゴ礁への赤土汚染」「ゴミのポイ捨て」「海岸の漂着ゴミ」などの方がよりクリティカルな気がしています。

移住定住推進の観点から

ここからは、移住定住推進の観点から観光が町にどのように寄与するのかを考えてみたいと思います。

観光は移住・定住の入り口

言うまでもないことかもしれませんが、観光でいらっしゃる方がその町のファンになり、「この町に住みたい」と思い、移住する……という流れが存在しますし、実際に多くの方がそのようにして移住されています。

例えば、2018年度の転入者(転勤者除く)に、移住の際に参考にした情報源を聞くと「下見」が1位となりました。

移住定住に関する窓口をやっている肌感覚としてですが、久米島町の場合、完全に移住目的の下見というよりも、観光を兼ねて下見に来る方が多いです。おそらく、「観光するついでに気に入れば住んでもいいかな」といった感覚の方が多いのではと思っております。

240万~300万の所得の確保

また、移住定住には所得の確保も重要です。

2018年の移住希望者の希望年収(n=62)は、平均315.4万、中央値300万。

2018年の転出者にアンケートで聞いた「久米島で安心して暮らす上で十分だと思う収入(総額)はどのくらいだと思いましたか?」の質問は(n=79)、平均232.3万、中央値240万となりました(月収から年収に換算)。

一方久米島の所得はというと、いろんな計算方法があり一概にはいえませんが、以前島ぐらしコンシェルジュで扱っている求人の年収をまとめたところ、平均としては概ね190-200万の間に収まりそうでした。

年収約200万として、月あたり16-17万。手取りは13万前後といった所でしょうか。久米島はアパートの家賃がだ概ね4万程度なので、残り9万少々から生活の諸々を支払うことになります。離島なので物価もちょっと高くなりがちですし、車社会なので車両代、ガソリン代、保険、車検費用などもかかります。ちょっと生活しんどいな、と。僕も実際に暮らしていて、やっぱり年収にして240万以上はほしいなと思います。

では、所得はどうやったら上がるのでしょうか?

久米島の1人当たり町民所得(町総所得/町人口)は、2006年では181.5万円、2014年では200.4万円となっています(沖縄県市町村民所得より)。人口換算で、ざっくり8年間で19万くらい伸びた形です。まずは、これまで所得はこのくらいのペースで上昇してきた、ということになります。

今後はどうでしょうか。オリンピック前の好景気や沖縄県自体の最低賃金の上昇もあり、ここ数年は所得は伸びるかもしれません。しかし、それ以降は人口減少問題が深刻化することもあり、好材料に乏しく、それほど良い見通しが立てられないように思います。

もちろん所得の高い求人募集が増えることが理想ですが、そのようなヒーロー的な会社の台頭を待っていても埒が明きません。

結局数十万単位で収入を向上させるには、「お金が欲しい人自身が、自分の力で稼ぐ力を伸ばす」方が近道なのだろうと思うのです。久米島で2年間複業をしてきて、60-80万くらいはプラスで稼げている僕自身の実感からも思います。

ここまでのまとめ~解決すべき課題と方針とは~

解決すべき課題と方針をまとめると、このようになります。

・観光産業が伸びれば島全体が儲かりやすく、移住定住推進にもつながりうる

・お土産は現在消費額、満足度共に低い。伸ばしがいあり

・宿泊は島内資本の事業者を伸ばす

・個人事業、小商い的に数十万稼げるような人が増えると移住・定住促進にもなりそう

課題解決案~観光系事業の「小商い型」個人事業創業支援~

ここまで、取り組むべき課題と方針について解説してきました。ここからは、課題解決案について解説します。

端的にいうと、「観光系の小商い型個人事業創業支援(体験、民泊、お土産)」を施策として盛り込んで頂きたい。その上で、僕も主体となって実施していければと考えています。

小商いとは

小商いとは、名前の通り「小さな商い」のこと。すなわち、大きな投資をせず、少額の元手で運営するビジネスのことです。

詳細はこのあたりの本をご覧ください。

 

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なぜ小商いなのか

なぜ「小商い」を推進するべきなのかを解説します。

離島なので市場規模が小さい

久米島は、人口規模で8000人ほどの小さな町です。離島なので商圏があるわけでもありません。このような環境で、地域に根ざした市場で何かしら起業するときに、フルタイムで従事し十分な収益を上げることはかなり難しいです。

実際に、以前某大手IT系企業N社の役員さんが来た時にも、「この市場規模で島内向けのビジネスをやることは我々は考えない」といったことを仰っていました。

元手が少なくてすむ

小商いの大きなメリットは、元手が少なくてすむ点です。

沖縄は日本で一番経済的に貧しい県です。内閣府によると、2015年の沖縄県の1人当たり県民所得は216.6万円で、47都道府県中最下位でした(1位は東京都で537.8万円)。

【出典】県民経済計算(平成18年度 – 平成27年度)(2008SNA、平成23年基準計数) – 内閣府

貯蓄も見てみます。総務省統計局によると、2017年のデータとして、

・沖縄地方の1世帯当たり平均貯蓄現在高は709万で、こちらも最下位(全国平均は1812万、1位は近畿地方で2020万)。

・県庁所在地別で比較した場合、那覇市の1世帯当たり平均貯蓄現在高は838万で、やはり最下位(1位は奈良市で2503万)。

【出典】「<貯蓄・負債>貯蓄及び負債の年平均1世帯当たり現在高 都市階級・地方・都道府県庁所在市別」家計調査 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 年報 年次 2017年 | ファイルから探す | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

沖縄県は、所得も貯蓄も最下位なのです。

余剰資金がなければ、ビジネスへの投資はできません。その上で、所得の低い沖縄はなかなかビジネスが始めづらい、といえるのではないでしょうか。

ただ、小商いであれば、ビジネスを始める元手が少なくて済みます。そのため、所得と貯蓄の少ない沖縄に向いた方法であるといえます。

失敗しても立ち直りやすい

「起業して10年間生き残れる会社は1割にも満たない」という話があります。実際の割合には色んな説があるようですが、少なくとも、「起業には失敗がつきまとうもの」というのは多くの方が納得がいくことではないでしょうか。

小商いであれば、失敗した場合でも、最初にかけた元手が少ないので、やり直しがききます。

変動の激しい時代だから

特に、「失敗しても立ち直りやすい」ことは、変動の激しい現在の環境にはマッチしていると思います。

技術の進歩にともない、未来がますます予測不可能な時代になってきています。大きくお金をかけて投資をしても、イノベーションが起きてしまえば、たちまち「時代遅れ」となり投資金額を回収しきれなくなってしまうこともありえます。

また、災害大国でもある日本では、いつ台風や大雨、地震や津波が起きるかわかりません。やはり投資が回収しきれないまま災害に出くわしてしまうこともありえます。

変動の激しい時代だからこそ、復活しやすいような「しなやかさ」が必要なのです。

島外市場向けに大きいビジネスはできるけれども

もちろん島外やグローバル市場を相手にしたビジネスを展開する、という他の選択肢もありますし、実際にそのようなビジネスを経営されている方も島内にいらっしゃいます(たとえばポイントピュールさんとか)。

しかし、その場合は施設整備に、最低数千万円規模、普通に考えて億以上での投資が必要となります。当たるかどうかもわかりませんし、島ならではの問題(物流や営業など)もつきまといます。そのようなビジネスができるのは、外部資本で資金がある程度潤沢にある人以外には、島に根ざした人や、不退転の覚悟を持った人、「ここで骨を埋める」と決めた人しか難しいのではと考えます。

具体的にどのような小商いがありうるか

ここからは、ここ久米島で小商いをする場合、どのようなやり方がありうるのかを考えてみます。

お土産→将来的にはシェアキッチンやシェア工房があると良いかも

お土産は基本モノづくりになります。お土産物屋さんに並ぶ商品や食品を見ると、久米島は素材を島外に出し、島外で加工し商品化する、といったケースが見た感じ多そうですが、地域経済循環を良くするためには、島内で生産できることが理想です。ですが、設備投資が必要となります。一か八かで投資するのは、変化の激しいこれからの時代向きではないなあ、と思ってしまいます。

経験やノウハウのある方はいきなり自分で始めるのも良いでしょうが、例えば、シェアキッチンやシェア工房のような、ちょっとした商品開発ができるようなスペースがあれば良いかもしれません。

しかし、この施策は初期投資もかかるため、施設の利用希望者がある程度の人数集まらないとちょっとつらそうです。モノづくり系の小商いをしたい、という方の声を集めるところからかな、と思います。

宿泊→民泊の推進

石垣島でも宮古島でも、もちろん久米島でも、島外資本のホテルは基本的に「大規模」「リゾート」ホテルです。この路線で島内資本の会社が勝てるとは思えません

なので、戦略的にはニッチな「小規模」「生活密着」の領域から攻める方が得策だと思っております。

例えば、ホームステイのような、素朴な温かみのある受け入れを行う。大人数を賄えるような冷凍食品ではなく、その季節時々の少量多品種の地のものを扱う。その他、オーナーの趣味全開の、コアなファンが集まる宿も面白いかもしれません。

そうすることで、観光客さんにとって選択肢が増え、これまで来なかったような客層がとりこめ、既存業者とも競合せず、相利共生していけるようになると思います。

体験事業→小商い型として重点的に推進

勝ち目があると思うのが、この観光体験事業です。体験事業は商品開発や宿泊と異なり、よりいっそう初期投資や在庫が少なく、粗利も高く設定できます。また、人件費がメインの出費ですから、島内にお金が落ちやすいと思います。

「久米島らしさのある観光体験を提供したい」と言う声を多く聞きますが、一番久米島らしいのは、単純に島の観光地や食材をPRするのではなく、住んでいる人の人間性が伝わるような体験プログラムかな、とも思います。「Aさんと行く久米島ディープツアー」とか、「Bさんと行くスナック行脚ツアー」とか、「Cさんの船でグルクン釣り」とか。

例えば仕事旅行やアソビューなど、既存のサイトでプログラムを作って掲載していく。ペライチなどで簡単なサイトを募り、google広告を出稿するのも良いでしょう。

定期開催できるようになったら、久米島の「島の学校」に登録し、観光協会からのプログラムとして提供する。そうすれば、観光協会も斡旋料が入ります。

※余談:代々の「久米島民」じゃなければ久米島らしくないのか

ちょっと脱線しますが、ちなみに多くの人が悩みがちなのは、「プログラムの提供者は、代々久米島に住んでいる人じゃないと久米島らしくないのではないか」問題。人により意見は違いますが、個人的には、住んでいる人がプログラムを提供するのであれば、十分久米島らしいと思っております。ただし、この場合「久米島らしい」の前には「今の」という言葉がつきますが。

おそらくこの、多くの方が思っている「地域らしさ」という考え方は、厳密に言うと「過去の地域らしさ」という観点であり、過去からの連続性を意識しているのだと思うのです。

このあたりは「そもそも過去とは存在しない」とする哲学的な時間軸の話や、「ホロン」の概念を考えていくとまた別の面白みが出てくるのですが、それはちょっとマニアックになるのでまたいづれ。

「チャレンジできる島」へ…最初は誰もが「やったことがない」のだから

正直、今の久米島は「チャレンジしやすい風土がある」とは言いきれません

そもそもパイが少ないのはしょうがないですが、消費活動は保守的で、「出る杭は打たれる」といった、沖縄大学の樋口先生が指摘する沖縄らしい同調圧力は、久米島にも確かに存在していると思います。

沖縄から貧困がなくならない本当の理由(3)低所得の構造 | タイムス×クロス 樋口耕太郎のオキナワ・ニューメディア | 沖縄タイムス+プラス

だけど、島ではそんな同調圧力にも負けずに、「やってやろう」という気持ちで取り組んでいる人がいることも確かです。そんな人達が少しずつ増えていけば、多くの人が気持ちよく「やってみなはれ」と言え、若手やなにかやってみたい挑戦者を応援できるようになる。そんな未来が訪れるはずだと信じています。

そして、たぶん、そういう挑戦をする人も、最初はほとんどみんな、「何をやりたいのかわからない」といった状態だったと思うのです。だって、最初はだれもが「やったことがない」のだから

全ては小さな「やってみたい」からはじまる。小さな「やってみたい」という気持ちを、火種を丁寧に大きくしていくように、土から出た芽に水をやるように、育てていくものだと思うのです。

だから、最初はどんな荒唐無稽に見えても、論理的に矛盾を感じても、とりあえず「やってみなはれ」とやってみる機会を与え、見守っていくようなことが必要だと思っております。そういうことをしていかないと、人が地域で育つ、なんて未来は来ないのではないかと。

個人が未来を変えられる

久米島で暮らし働く面白みとしては、自分ひとりのなす仕事が、島の未来を変えうる、ということです。

ポイントピュールの大道社長は、久米島から中国やベトナム、韓国やロシアなどへとビジネスを展開し、「離島からでも世界を相手に勝負ができる」ということを証明しています。

久米島病院の津波看護部長は、アイランダーを始めとする各所でのPR活動や、独自の奨学金制度を整備し、人手不足の現代でも看護師さんが集まる病院を作っています。

その他、ひとりひとりの仕事が、少しずつ、この島の未来を変えています。自分の仕事の影響がこの島では見れるのです。

 

【関連】
『久米島から世界へ』株式会社ポイントピュール | 【沖縄・久米島の移住定住情報】島ぐらしガイド 

看護部について 離島医療を担う看護師・助産師募集 沖縄県 公立久米島病院 

 

観光も、一人ひとりが未来を変えられる仕事です。新しい産業、新しい人との出会いが生まれる。その結果、この島で愉快に暮らしていける人が増え、これまでなかった未来が拓かれるはずです。そしてその未来を切り拓くのは、一人ひとりの個人なのだと思います。

地域のための自己犠牲ではなく、自分自身がやりたいこと、楽しいことで、地域のためにもなることができる。一人ひとりの力で。これこそが、久米島町における観光の可能性だと考えています。

 

毎週5人を集め、2泊してもらえる事業者が20件あれば観光客数は10%増加する

これは皮算用ですが、「個人が与える影響が島だと大きい」という話の一例として。

もし仮に、新たな顧客として毎週5人を集め、楽しんで頂き、2泊してもらえるような事業者が20件あれば、1年間ではこうなります。

5人×2泊×52週×20件=10400人

久米島の観光客数は年間約10万人なので、観光客数10%の増加を、20件の事業者で出すことができうるのです。

おわりに~やる人を掘り起こし、やりたい気持ちを育てる町へ~

今回考えた施策は、「『お菓子を中心としたお土産商品開発』『民泊事業』『観光プログラム提供』を行う複業型起業家・個人事業主の創業支援」です。このような活動を僕自身もやっていきたいと思いますし、仕組みを作っていきたい。そう考えています。

この施策を立てたところで、成功するわけでもありませんし、失敗するわけでもありません。全てこの計画を受けて、「やる人」がどれだけのびのびと挑戦でき、成長していけるか、それにかかっていると思います。

今この島にいる「やる人」を掘り起こし、火種を育てるように、やりたい気持ちやプロジェクトを育てていく。そんな未来をこの島で作っていきたいです。

ただ、僕がひとりだけで「やってやるぞ!」と息巻いていても、何もできません。空回りして終わってしまうことでしょう。一緒に「やって」いきましょう。

 

※最後になりますが、今回の観光振興計画策定に関するプロジェクトを運営されていたO社のみなさん、O先生、誠にありがとうございました。

まちづくり界隈の議論には、「提案だけして終わり」「実現が伴わない」といったように、地域外のコンサルへの批判が集まりがちです。しかし、今回提供頂いたデータは、これから観光に関するスタートアップを考えている人にとっては有益なデータでした。月ごとの入域者数や年齢層、消費単価、他地域との比較などを、これまでの調査経験や実績を元にわかりやすくまとめてくれていました。

データを元に「やる人」がいないこと、地域側がうまく外部の力を利用できないことが、このような批判の原因のひとつでもあるはずです。

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