こんにちは、いしおです。
地域づくり関係者の中で最近バズワードとなっている「関係人口」。
地方のみならず日本全体で人口が減る中、地域の活力を維持するために地域外から地域に関わってくれる「関係人口」を獲得しよう、という流れが生まれつつあります。
でも、この流れ、放っておいたら危険だと思ってます。
今日は、そんな「関係人口の獲得」の前に地域が本当にやるべきことについて言及します。
※ちなみに、以前の記事では「関係人口」という言葉の「冷たさ」について言及しました。今回は、その冷たさも踏まえた上であえて「関係人口」という言葉を使ってみることにします。
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「関係人口」とは
おさらいです。関係人口とは、何でしょうか。
以前書いた記事からの抜粋となりますが、関係人口とは、このような意味の言葉です。
関係人口とは、その地域に住む定住人口とは別の、地域との関わりを持ってくださる人口のことです。定住まではいかなくても、その地域の産品を購入してくれたり、足しげく通ったり、地域と都会をつなぐようなイベントを開いてくれたりなど、様々な関わりをしてくれます。わかりやすく言うと、その地域の「ファン」と置き換えられると思います。
「「関係人口」は、一刻も早く死語にすべき言葉かもしれない」より
「関係人口を増やす」前に、地域が本当に行うべきこととは
関係人口づくりの前に、地域が本当に行うべきことがあると考えます。
それは、「地域側のプレイヤー育成」です。
地域における「プレイヤー」とは、ビジョンを自ら描き、責任感を持って行動し実現していく人のこと。
では、なぜ地域には、プレイヤーが必要なのでしょうか。
海士町で唯一のホテル「マリンポートホテル海士」を経営される(株)海士 代表取締役社長の青山さんが、当時海士町の観光協会の職員をされていたときのインタビュー記事を紹介させてください。
その頃の僕の年齢は22歳。海士町の未来のために何か自分も動きたい。そう思って、「こんな案はどうか」「もっとこうしたらいいんじゃないか」とプランを練ってはパワーポイントで資料を作り、現場に行って提案して……どうにか自分の描いた青写真が海士町の役に立たないものかと、毎日島の中を動き回っていました。
そんなことを一年くらい続けた頃でしょうか。僕を採用してくれた課長に「お前は一体、今年いくら給料をもらったんだ」と聞かれたんです。
僕 : 200万円くらいでしょうか。
課長 : その200万円を仕事で稼いだのか?
僕 : いや、稼いでないです。
課長 : じゃあお前の生み出している価値はなんだ?
僕 : パワーポイントの資料200枚くらいでしょうか……。もうお分かりですよね(笑)。それ以上は何も言われませんでしたが、社会人としての甘さを自覚するのに十分すぎる会話でした。
(中略)
素晴らしいアイディア、未来への可能性。もちろん、それらはどんどん生み出されていくべきです。でも、今地域にはプランよりもプレイヤーが足りない。必要なのはプランではなく、発言した内容に責任をもって、描いたプランを実行していく人、当事者です。
「描いた未来へ導く役を、自分が務めます」と言えますか? 「町づくりを頑張っていきましょう」と口にしても、みんなどこか他人事になってはいないでしょうか。胸を張って言えないのなら、一度立ち止まって考え直してみた方がいい。
企画や提案が多くなりがちな時に、立ち止まって考えたくなるエピソードです。
「関係人口」は「武器」。扱うプレイヤーが大事
「関係人口」とは、地域づくりのためのいわば「武器」のようなものです。
ドラゴンクエストなどのロールプレイングゲームを思い出してもらえればよいのですが、武器がそれだけで敵と戦ってくれるわけはありません。武器を使って戦うのは「人」です。
また、「武器」を正しく扱えなければ、文字通り振り回されたり、自分を傷つけてしまうことにもなるでしょう。
地域には、武器をちゃんと扱える人、プレイヤーが必要なのです。
「関係人口」は「手札」。どうゲームをプレイするか。
また、関係人口とは「手札」である、とも言えるかと思います。
ポーカーでも大貧民でもよいのですが、トランプでゲームをプレイする時にどのような手札をもっているかは重要です。でも、それよりも重要なのは、その手札を元に、どうゲームをプレイするか、でしょう。
つまり、こちらも言葉通り「プレイヤー」が重要なのです。
やはり「プレイヤー」こそが尊い
昨今は地域づくりやまちづくりというキーワードが注目されるようになり、これまででは考えられないような大企業や先進的なベンチャー企業までもが地域づくりに関わろうとしています。
地域へのUターン、Iターンはできない、でも地域づくり、まちづくりに関わりたい、とおっしゃってくださる方も多くいらっしゃいます。
僕が以前住んでいた海士町や、ここ沖縄は久米島でも、色々な提案を地域外の企業や人から頂き、またそのような様子を垣間見てきました。
でも、どんなに良い提案でも、地域内に「やる人」がいないからできない。もしくは、地域外の人材や、企業の能力、その存在すらも持て余し、有効に活用しきれない。
そんな光景によく出会いますし、自分もそのような失敗を重ねてきました。
逆に、良い地域だな、と思える場所には、必ず地域外の力をうまく活かせるプレイヤーが、有名無名かかわらず必ず存在しているように思います。
地域にとって重要なのは、自らの地域がどうあるべきかを考え抜き、実際に行動していくような、地域におけるプレイヤーをどう育て、どう活躍してもらうか、なのだと思います。関係人口づくりではなく。
どんなに優れた関係人口という武器を持っていた所で、扱うプレイヤーがレベル1であれば、強い魔物は倒せないのですから。
プレイヤーは「地域に根ざした人」
そして、プレイヤーは「地域に根ざした人」でしょう。地域のビジョンを描くには、地域のことを自分のことのように考える必要があるからです。当事者意識、というか、当事者でなければならないのだと思います。
※ちなみに「地域に根ざす、とはなにか」は非常に重要な問いだと思いますので、また別の機会に考えてみたいです。そして自分が果たして「根ざせ」るのかも。
今のところ、単純に「家を構えている」とか「墓がある」ということではないはず、ということではなく、「その地域の存在が自らにとってかけがえのないものであると認識しており、地域が傷つけられると自分にとっても耐え難い痛みを覚える」みたいな話なのでは、と思っております。
手段と目的を間違えない
とはいえ、関係人口とはいきなり地域への責任感や永住を問うのではなく、すこしずつ地域との関係を深めていき、結果としての定住が発生する、という考えでもあるかと思います。プレイヤーを獲得する手段として関係人口づくりに取り組むのは、悪くはないかもしれません。
もしくは、地域内のプレイヤーを育成するために、様々な地域外の人に関わってもらい、プレイヤーが育ち、変容していくようしかける、といった関係人口の活かし方も有効でしょう。
しかし、そのような場合であっても、メインの目的は「プレイヤーの獲得と育成」です。「関係人口づくり」とは、その手段にしかすぎません。手段と目的を混同しないように。
関係人口はあくまで武器や手札にしかすぎない、と認識しておく必要が、地域づくり、まちづくりに関わる我々には必要なのだと思います。
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